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生活,mono-ihu,映画 2011年08月20日 mono-ihu トラックバック:0コメント:0

三週目、『生活』「もの云う映画」

宮崎吾朗『コクリコ坂から』



セカンドアフター。
東日本大震災以降に叫ばれるようになったフレーズが「第2の戦後」である。ブログやインターネットの掲示板、テレビから紙の雑誌にまでいたる様々なメディアは津波の跡を戦場の姿に例えた。津波が押し寄せた後の瓦礫だけが残った大地の有様は、さながら東京大空襲を思わせるような惨事だったからだ。しかし、ここには特異な一面があるように感じる。つまりフレーズの指し示すものがいくつもあるのだ。それは言葉に込められた2つの意味付けによって与えられているように思われる。1つはすでに述べたように何も残らなかったというマイナスのイメージ。もう1つは何も残らなかった状況から、すべてをもう一度やりなおしたいという回帰への望みである。

70年代以降の経済成長やテクノロジーの伸張というプロセスを「もしかしたら間違いだったのかもしれない」と否定して行く、その結果として「再度のスタートライン」として「60年代」に文字通り「帰りたい」という願望があったりするわけです。(『コクリコ坂から』に見る「60年代回帰願望」、日米の違いとは?冷泉彰彦*1

この夏、スタジオジブリが発表していた「ジブリ中長期経営計画」の構想から、2010年公開『借りぐらしのアリエッティ』に続いて、宮崎吾朗監督の第2作『コクリコ坂から』が公開された。本作は1980年に少女マンガ誌『なかよし』に掲載された同名マンガ作品(原作・高橋千鶴、佐山哲郎)のアニメ化版だ。映画化に伴って原作の基本的な設定やストーリーラインを踏襲しながらも、大胆に翻案を施している。あらすじは以下の引用文をご覧いただきたい。

「翌年に東京オリンピックを控えた、1963年の横浜。古いものを壊し、どんどん新しいものを作っていこうとする気運のなかで、横浜のとある高校でも老朽化した文化部部室の建物「カルチェラタン」の取り壊し計画が持ち上がる。そんな騒動の中、学生たちを率い、部室棟を守ろうとする少年・俊と、高校に通いながら下宿宿を切り盛りする働き者の少女・海が出会う。」(コクリコ坂から – goo 映画*2

それは新しい時代の幕開けであり、何かが失われようとしている時代でもある―、と脚本を担当した宮崎駿が語るように、物資と人間、まさに歴史のるつぼであった横浜がその舞台となる。力による圧迫とは無縁の完全にフラットな社会。太平洋戦争終結から18年を経て、焼け跡から奇跡の復興を遂げた高度経済成長の只中にあった日本の「どこにでもあった普通の生活」が描かれるのが今作だ。東京オリンピック開催の前年、公害問題や先進国の国民としての意識がナショナルな規模で生活に根付き始めた時期、たしかな展望として未来が拓けていく(ように錯覚した)感覚の中で、人々が夢見たものとはいったいなんだったのだろうか。

物語の重要な鍵となるのがU・W旗だ。それは「安全な航行を祈る」を意味する。船にとって最大の災難である荒天に見舞われないままに安全な航海を続けることが船の念願。大海原で2隻の船がすれちがったとき、お互いに相手の船の安全を願ってU・Wの信号旗を掲揚するのが慣習となったのだそう。ヒロインの松崎海は、この旗を庭先に掲げるのが日課になっている。父を航海で亡くした彼女は未だにその帰りを待ち続けているのだ。劇中、この帰り路を示す目印は別の目印として役割を果たしていくことになるが、それは自身の目で確かめてほしい。映画終盤、海はこの旗を初めて逆側から眺めることになる。その目に映るものとは・・・。
 
映画を離れて俯瞰してみると、この時期この映画が公開されたことに偶然ではない意味を感じるのは僕だけではないはず。さまざまな難局に立ち向かわなければいけない今において、この映画自体が「第2の戦後」という形容に潜在的な60年代への回帰願望を託した現代人の、「安全な航行を祈る」希望の旗に違いない。


コクリコ坂から

参考資料:
*1冷泉彰彦『プリンストン発 新潮流アメリカ』(http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2011/07/post-327.php
*2goo映画『コクリコ坂から』(http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17788/
『BRUTUS特別編集スタジオジブリ「コクリコ坂から」、「借りぐらしのアリエッティ」・・・・・・。』

・・・・

最終週は『生活』に「もの云う人々」です。8月27日土曜日に更新予定!


8月27日更新予定だった「もの云う人々」ですが、編集作業に少し手間取っているので、記事を書き上げ次第の更新にさせてもらいます。すみません。
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